「あの人が休むと記事が出せない」「担当者が異動したら、やり方が誰も分からなくなった」——コンテンツマーケティングの運用で、制作が特定の担当者に依存する「属人化」に悩む声は少なくありません。

属人化そのものは、運用の初期には自然に起こりやすい状態です。ただし、そのまま続くと、休暇や異動、退職といった変化のたびに制作が止まるリスクを抱えることになります。

本記事では、コンテンツマーケティングにおける属人化の起き方を整理し、リスクを点検する棚卸しの手順と、標準化の手段を比べる軸を解説します。特定のツールや制作会社を推奨するものではなく、自社の状況に合わせて判断するための視点を提示することを目的としています。

属人化とは|コンテンツ制作で起きること

属人化とは、業務の進め方や判断の基準が特定の個人の頭の中にあり、他の人が代わって行えない状態を指します。

コンテンツ制作では、たとえば次のような形で現れます。

  • 記事のテーマ選びが、担当者の経験と感覚だけで決まっている
  • 文章のトーンや表記ルールが、担当者以外には分からない
  • 公開作業やCMSの操作手順を知っているのが一人だけ
  • 過去の記事の意図や改善の経緯が、記録に残っていない

属人化には「その人の専門性が品質を支えている」という良い面もあります。問題は、その状態が把握されないまま、変化に備えられていないことです。

属人化が起きやすい工程と理由

制作の流れを大きく分けると、属人化が起きやすい工程には傾向があります。

工程 属人化しやすい要素
企画 テーマ選定の基準、読者像の理解
構成・執筆 文体、表記ルール、取材・調査の進め方
確認・修正 何をもって「OK」とするかの基準
公開 CMS操作、画像・メタ情報の設定手順
分析・改善 見るべき指標、改善の判断の仕方

背景には、少人数で始めたために役割を明文化する必要がなかった、日々の制作に追われて記録を残す余裕がなかった、といった事情があるのが一般的です。つまり、担当者個人の問題ではなく、運用の仕組みの問題として捉えるほうが建設的です。

属人化のリスクを点検する棚卸しの手順

まず、自社でどこが属人化しているかを見える形にします。

  1. 工程を書き出す:企画から公開・分析まで、記事1本が出るまでの流れを列挙する
  2. 担当者を記入する:各工程を実際に誰が行っているかを記入する
  3. 代替可能性を確認する:その担当者が不在でも、他の人が進められるかを「できる/一部できる/できない」で整理する
  4. 影響度を考える:「できない」工程が止まった場合、制作全体にどの程度の影響が出るかを確認する
  5. 優先順位をつける:影響が大きく、代替が難しい工程から対応する

この作業は、担当者本人だけでなく、上長や関係者と一緒に行うと、見落としが減ります。

標準化の手段を比べる軸

属人化を減らす代表的な手段には、手順書、チェックリスト、テンプレート、レビュー体制などがあります。どれが適しているかは工程や体制によって異なるため、次の軸で比べて選びます。

手段 向いている場面 検討の軸
手順書 公開作業など、手順が決まっている作業 更新の手間・古くなりやすさ
チェックリスト 確認・校正など、抜け漏れを防ぎたい作業 項目数が多すぎないか
テンプレート 構成や記事の型をそろえたい企画・執筆 型に縛られすぎないか
複数人でのレビュー 判断基準を共有したい確認・修正 関係者の時間を確保できるか

比較のポイントは次の3つです。

  • 作る負担:用意にどれくらいの時間がかかるか
  • 保つ負担:内容が古くなったときに更新し続けられるか
  • 使われやすさ:実際の担当者が日常的に参照できる形か

どれほど立派な手順書でも、更新されず参照されなければ形骸化します。「作ること」より「使われ続けること」を基準に選ぶのが現実的です。

属人化を減らす進め方

すべてを一度に標準化しようとすると負担が大きく、かえって運用が止まる原因になります。次の順で小さく進めます。

  1. 最もリスクの高い工程を一つ選ぶ:棚卸しの結果から決める
  2. 担当者本人に書き出してもらう:暗黙知を言語化するには、本人の協力が欠かせない
  3. 別の人が試す:書かれた内容だけで、他の人が作業できるかを確認し、足りない部分を補う
  4. 定期的に見直す:運用の変化に合わせて、内容を更新する機会を設ける

なお、属人化を解消する方法として、内製を強めるか外部のリソースを活用するかといった体制の選択も論点になりますが、これは自社の目的や予算によって判断が分かれるため、別の観点で検討する必要があります。

まとめ:属人化は「見える化」から始める

コンテンツ制作の属人化は、運用の初期に自然に生まれやすく、担当者個人の問題ではありません。大切なのは、どの工程がどの程度特定の人に依存しているかを把握し、リスクの大きい工程から順に標準化していくことです。

次に確認したいポイント

  • 記事1本が出るまでの工程と担当者を書き出せているか
  • 担当者が不在でも進められない工程を把握できているか
  • 標準化の手段を「作る負担・保つ負担・使われやすさ」で比べられているか

なお、本記事は成果や効果を保証するものではありません。課題の全体像については、関連記事「コンテンツマーケティングがうまくいかない理由|よくある課題と見直しの手順」もあわせてご覧ください。