編集の河村です。長らく記事制作に携わってきて、最近は記事制作における生成AIの活用について質問されることや、編集者同士の会話で話題に出ることが多くなってきました。
そこで今回は、企業の記事制作における生成AI活用の在り方について少しまとめてみたいと思います。
企業の公式サイトやオウンドメディアなどにおける記事制作において、生成AIを活用することで、業務が効率化される面はたしかにあります。ただしそれは、記事制作スキルのある人がいることではじめて効果的に成り立つと考えています。
記事制作の仕事がなくなったら困るからそういうことを言うんだろうという見方をされることも、もしかしたらあるかもしれません。しかしそうではなく、文章を読んだり書いたりするのが好きな人間として、品質に問題のある記事が増えることでインターネットでの情報検索が役に立たなくなることを防ぎたい、記事をきっかけとしたトラブルを防ぎたいという考えから言っています。
とくに、記事を通じて自社の認知を上げたい、訪問や問い合わせにつなげたい、ブランディングに利用したい、ファンを作りたいなどの目的があるならば、たとえ生成AIを使うにしろ、記事制作のスキルを持った人の手と目を入れることを推奨します。
生成AIを使って記事制作をするのに記事制作スキルが必要な理由
企業の記事制作において、生成AIを使う場合でも記事制作スキルを持った人が必要な理由として次のような点があげられます。
- 生成AIが提示する情報がすべて正しいわけではない
- ターゲットに刺さる記事にはオリジナリティが必要
- 公開前に人の目による記事の品質チェックは必須
なお、ここではChatGPTに代表されるような生成AIを利用する場合を想定しています。そのうえで、上記3点についてそれぞれ詳しく解説していきます。
生成AIが提示する情報がすべて正しいわけではない
企業の公式サイトやオウンドメディアの記事制作では、専門性と正確性が求められます。
生成AIを使って文章を作成する場合、人間がプロンプトによって指示を出し、生成AIはインターネット上の膨大な情報を基に、プロンプトに対応する文章を作成します。
しかし、インターネット上の情報は玉石混交で、正しい情報もあれば間違った情報も存在します。そういった影響もあり、生成AIの文章には、間違った情報や存在しない情報ソースが含まれることがあります。また、生成AIが収集するデータには期間が定められており、期間外の情報は反映されていません。
生成AIに指示を出す人間に専門的な知識がないと、そういった情報の正誤や不足を判断できず、記事の正確性が損なわれます。間違った情報を発信してしまい、会社やブランドの信頼性を損なうことにもなりかねません。
また、そもそも指示を出す人間に専門的な知見がないと、専門性の高い情報を含んだ文章を作成するよう、効果的に指示を出すことができません。
これは、対生成AIに限らず対人間でも同様ですが、相手に効果的に動いてもらうには、そのために必要な情報や条件を提示することが重要です。求める記事を得るためにはどのような情報や条件が必要なのか、それを正しく判断するためには記事制作のスキルが必須です。
ターゲットに刺さる記事にはオリジナリティが必要
企業の公式サイトやオウンドメディアの記事制作では、どういった人に読んでほしいのかというターゲットを定め、ターゲットの思考・感情・行動について何らかの変化を促すことを目的とします。
たとえば、自社のことをまだ知らない人に自社のブランドや商品・サービスについて知ってほしい、自社の商品・サービスに興味がある人に資料請求や問い合わせをしてほしい、自社の商品・サービスを利用したことのある人にリピートしてもらいファンになってほしいなど。
そのためには、Web検索で得られる一般的な情報だけを発信するのではなく、自分たちだからこそ提供できる知識や経験や考え方、そして記事としての面白みが必要です。これらが、ターゲットが記事を読みたいと思える、記事のオリジナリティとなります。
記事制作スキルのある人が入ることで、自社の何がオリジナリティとなるのかを引き出し、記事に落とし込むことができます。
公開前に人の目による記事の品質チェックは必須
企業の公式サイトやオウンドメディアの記事制作では、記事ができたら、公開前に次のような観点からチェックを行います。
- 誤字脱字がないか
- 文章の意味が通らないところ、矛盾しているところはないか
- 間違った情報が含まれていないか
- 他媒体からのコピペ・無断転載が含まれていないか
- ターゲットにとってわかりやすく興味をひかれる記事になっているか
これらのチェックに生成AIを使える部分もありますが、すべて対応できるわけではありません。記事制作スキルを持った人の目でも必ずチェックする必要があります。
また、自社の記事としてこの記事を公開して良いという責任を持つという点でも、人の目によるチェックは必須です。ただしこれは記事制作スキルの有無というより、企業のなかで責任を持てる立場の人が行うことになります。
万が一記事に関して何かトラブルがあった際、生成AIが責任を取ってくれるわけではありません。企業やブランドのの信頼を保つためには、責任を持った情報発信を行う必要があります。
企業の記事制作において生成AIをどう活用していくべきか
長々と書きましたが、結局言いたいのは、企業の記事制作において生成AIを活用することはできるが、同時に記事制作スキルを持った人の手と目もあったうえで活用したほうが良いということです。
ここまでを踏まえ、企業の記事制作における生成AIの使いどころはどこなのか、情報検索のあり方が変わるなかでわざわざ読んでもらえるコンテンツを作るにはどうしたら良いのかといったところを、今後の記事で紹介していきたいと思います。