何かと目にする機会が多くなったDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、DXの事例としてスターバックス社が取り上げられる機会も多いので、今回はスターバックス社での事例からDXとはどのような取り組みであるかを見ていきたいと思います。

スターバックスが提供する価値観

スターバックスでは、従来自宅でも、職場でもない第三の場所として「サードプレイス」という考え方でコーヒーを提供しており、これまで本家アメリカのスターバックスで公表されている売上をみても、大きく伸ばしてきました。

サードプレイスには「場所」という考えがある通り、米国でも創業期は店舗でゆっくりとくつろいでもらうことを重視していましたが、その後スターバックスは、テイクアウトや配達など、店舗外でもコーヒーを楽しんでもらう方法を採用し、現在ではデジタルを活用して顧客にコーヒーを楽しんでもらう体験の提供を目指しています。

スターバックスのDXの取り組み

スターバックスは、DXやCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)の観点で、時代に合わせて進化し続けています。

スターバックスは世界的にデジタル戦略を進めていますが、デジタルの取り組みは国ごとによって異なっています。

スターバックス(日本)はこれまでのデジタル施策として、2002年からスターバックスカードを導入したのを皮切りに、2013年にモバイルスターバックスカードを、2019年にはモバイルオーダー&ペイを導入しました[1]

この過程の中で、従来は「顧客はレジに並んで、お金を現金で払って、出来上がりをカウンターで待つ」という行動から、「モバイルからオーダーして、決済もモバイルで済ませて、レジでの待ち時間なしで商品を受け取れる」という行動へ進化してきました。決済も事前に完了してもらう(Order Ahead:事前オーダー)ことで、スムーズにテイクアウトが可能になりました。

DXとは顧客との関係性を再定義すること

サードプレイスとして、くつろげる場所でコーヒーを飲むという観点では、テイクアウトというのは、店舗でくつろぐわけではないため、ポリシーに反するようにも思いますが、サードプレイスという価値観を再定義しているという見方もできそうです[2]

従来は店内でくつろいだり、購入体験はそのままに、テイクアウトでコーヒーを楽しむという側面での魅力がありましたが、デリバリーサービスが普及する中で、店舗以外でもスターバックスのコーヒーを楽しんでくつろげる空間を作るという側面を重視したと考えれば、デジタル技術を用いて、いかに店舗と同じような顧客体験を維持するか、という考えがあったかもしれません。

テイクアウトにおいても、同様にモバイルでスムーズにオーダーできるという仕組みは、待ち時間をなくし、お気に入りの商品を近くの店舗で購入できるという新しいサードプレイスの価値観を提供しているとも考えられます。

書籍「アフターデジタル2」の中で、著者の藤井氏は、あるべきDXとして、「新たな顧客との関係性はどのようなものであり、どのような体験を提供する存在になるべきなのかを考える活動である」と述べています[3]

CXは手段である

スターバックスでは「Our Mission & Values[4]」を核として、「お客様にとって、なぜこのブランドでなければいけないのか」という点を追求しており、その手段としてのデジタル体験であるということをスターバックス コーヒー ジャパン 株式会社CMOの森井久恵氏も言っています[5]

企業にとって、本当に向き合うべきなのは、顧客であり、その顧客が何を求めているのか?を時代に合わせて考えて行くことがデジタル戦略を考える上では、重要であると言えそうです。

中小企業ではどのように考えるべきか?

今回の事例はスターバックスという、大手のコーヒーチェーンでの事例でしたので、中小企業の方からすると、イメージが湧きづらいかもしれません。

ただ、中小企業においても共通して考えるべきことは、ホームページといったデジタル技術を用いて、顧客にとってどのようなメリットがあるのか?を中心に考えてホームページを活用する目線は忘れないようにしたいですね。

[1]…顧客と従業員をデジタルでつなぐスターバックスのクラウド活用
[2]…経営図鑑(金澤一央、アルク社)
[3]…アフターデジタル2(藤井保文、日経BP社)
[4]…Our Mission(スターバックス)
[5]…店舗でもデジタルでも考え方は同じ。スターバックス コーヒー ジャパンCMOに聞く、心を動かす体験の作り方