DXという言葉が世の中に登場して久しいですが、解釈の広い言葉ですので、人によってその定義がなんなのか曖昧になることも多いのではないでしょうか?

今回はDXを解説するとともに、関連して使用される「デジタライゼーション」「デジタイゼーション」「IT化」「デジタル化」等の関連用語との違いも併せて解説していきたいと思います。

DXとは?

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、デジタル技術を用いて、ビジネスプロセスを変えていくこととされています。

ビジネスプロセスを変えるというとイメージが湧きづらいのですが、デジタルを用いて従来とは異なる売上を上げることができた、といったような収益構造を変えることをDXと捉えることができそうです。

DXという言葉の定義(経済産業省)

日本でDXの定義はというと、経済産業省が発表したDX推進ガイドラインの定義が参照されていることが多いです。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

経済産業省 「DX推進ガイドライン」

これをより理解しやすくするため、具体的な説明を加えてみましょう。

DXをもっとわかりやすくいうと

DXというのをより、簡単に言えば

“データとデジタル技術を用いて新しいビジネスモデルを構築すること”

という言い方が出来ます。

DXではよく、トランスフォーメーションとして“変革”という言葉が使われますが、単純に既存のプロセスをデジタルに置き換えるだけではなく、デジタル技術なしでは実現できない収益構造やビジネスの仕組みを作ることが本来の目的といえます。

DXは目的ではなく、結果としての後付け

重要なことはDXという言葉の定義を追いかけてもあまり意味がないということです。DXの成功事例として、海外ではNetflixやAmazonなどが挙げられることもあります。しかし、それらは始めからDX自体を目的としていたわけではありません。既存の課題を明確にし、その課題を技術を用いて解決したという行為を後からDXと言うようになったのです。

つまり、DXを行うにあたって、何かツールを探してうまく活用できないかと考えるよりも、既存の課題やビジネス上の痛みを明確にした上で、それをどのように解決するかという点に注目することの方がはるかに重要です。

そもそもDXの目的は、売上を伸ばすことか、業務効率化によるコスト削減になりますので、そこにおける課題をしっかりと認識することが、効果のあるDXに繋がります。

決して、それはDXじゃない!などといった言葉遊びに時間を使わないようにしたいですね。

DXの段階

DXレポート2を見ると、DXの段階が紹介されており、比較的わかりやすく書かれていると思います。

よく、紙書類をデジタルデータに置き換えるといった、いわゆるデジタイゼーションやデジタル化も、広義の意味ではDXに入れられそうです。

DXの段階は、以下のステップに分けられます。

  1. デジタイゼーション:アナログからデジタルへの移行
  2. デジタライゼーション:IT技術を用いた業務効率化
  3. デジタルトランスフォーメーション:IT技術を用いた新しいビジネスモデルの創出

それぞれを概念の図で示します。

DX、デジタル化の違い

デジタイゼーション

デジタイゼーションは、紙媒体などのアナログデータや物理データをデジタルデータに置き換えることをいいます。

書類の電子化のように、紙の文書をスキャンし、PDFや他のデジタルフォーマットに変換してアーカイブするといったことや、写真や映画のデジタル化のように、フィルム写真や映画をデジタルメディアに変換し、デジタルストレージに保存するようなことが当てはまります。

デジタライゼーション

デジタライゼーションとは、単に情報をデジタル化することではなく、そのデジタルな情報を使って日々の仕事をよりスマートに、迅速に、または効率的に行うことです。

不動産会社のデジタライゼーションの事例としては、物件の仮想見学が挙げられます。昔ならば、顧客は物件を一つずつ実際に訪れて見なければなりませんでしたが、仮想見学であれば、オンラインで3Dの仮想ツアーを提供することができます。従業員、顧客双方の時間とコストの節約につながります。

税理士事務所では、クラウドベースの会計ソフトウェアを導入することで、いつでもどこからでも安全に会計データにアクセスできるようになります。これによって、税理士はリアルタイムで顧客と会計データの確認と修正を行うことができ、迅速なアドバイスを提供することが可能になります。

デジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーションは、ここまで紹介してきたように、デジタル技術を用いてビジネスモデルや顧客体験を変革する動きのことをいいます。

デジタルトランスフォーメーションは、厳密にいえば、ビジネスモデルの変革を指しますが、多くのケースで、デジタイゼーションやデジタライゼーションの事例としても紹介される場合もあり、解釈が別れる部分も大きいので、あまり厳密に言葉の定義にこだわる必要もないかと思います。

DXとデジタル化・IT化・電子化との違い

DXとデジタル化の違い

前章で紹介したデジタイゼーション、デジタライゼーションはどちらも日本語で表すとデジタル化という意味になり、アナログデータの電子化や、業務プロセスでのツール導入などが対象になります。

デジタル化はDXの一部ですが、デジタル化のことをDXという拡大した表現で使用する場合もありますので、話し手がどのような意図をもってDXとしているかに注意しましょう。

DXとIT化の違い

IT化とは、インターネット通信とシステムを導入する行為を指し、業務効率化を目的としたものや、業務プロセス改善など、広範な活動を含みます。この点を考えると、デジタル化と同じ意味か、やや広範な概念を含む言葉といえそうです。

IT化も抽象的な概念なので、DXを指す場合もあれば、単純なデジタルデータへの変換を指す場合もあります。あえて、ふわっとIT技術をとりれたい場合にIT化という言葉を使用することもできそうです。

DXと電子化

電子化は、紙などのアナログデータをデジタルデータに変換する行為をいいます。ペーパーレス化という表現を使う場合もあります。業務効率化の観点以外にも、環境資源保護の観点でも使用される場合もあります。

電子化は単純に行えばよいというだけではなく、電子化後の管理方法をどうするかを検討する必要があったり、電子帳簿保存法のように、税務関係などの重要書類は法律の要件に従う必要があったりと、ルールの確認が必要になる場合もあります。

電子化をもってDXとするのはかなり強引ではありますが、DXの最初の一歩は電子化から始まる側面もあります。電子化はDXのごく一部の行為を指しています。

DXの事例

最後にDXの事例を紹介したいと思います。

Netflix(ネットフリックス)

ネットフリックは元々はDVDをウェブでレンタルして、配送するというビジネスからスタートしました。その後、1998年に月額20ドルで月6本まで借りられるというサブスクリプションモデルをスタートします。この時にネットフリックスは、ユーザーの抱える2つの痛みを取り除いています。一つが、延滞料を払うという痛み。もう一つが次の作品を選ぶ手間という痛みです。2つ目の痛みは、見るべきリストに追加すれば、返すと自動配送されるというという仕組みと、リコメンドエンジンで、次に見るべき作品をユーザーが選びやすくすることで解決しました。

その後、ブロードバンド化の波にのり、VOD(ビデオオンデマンド)に舵を切ります。VOD化させることで、ユーザーは配送や作品選択の手間を排除し、テレビで見たい時にすぐに作品を見れるようになりました。

この様にネットフリックスは、デジタル技術やデータを活用しながら、新しいいビジネスモデルを構築していきました。ネットフリックスの事例で注目すべきなのは、技術の活用を目的にしたのではなく、ユーザーの痛みを取り除くために”手段”としてデジタル技術を用いている点です。

スターバックス

スターバックスでも、事前チャージで支払うことができるスターバックスカードからはじまり、その後モバイルオーダーで注文ができるようになるなど、DXの成功事例と言えそうです。

DX時代におけるホームページの役割は?

ホームページというと、旧来の古い戦略の様にも感じる方もいるかもしれませんが、時代と共にホームページの役割も変化しています。従来からある名刺としてのホームページだけではなく、あくまでもビジネスモデルの一部として、ホームページを活用すれば、売上を伸ばし、業務効率化によってコストを削減することも可能です。

新しい時代のDX戦略として、ホームページの活用を考えてはいかがでしょうか。

[1]・・・産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進(経済産業省)
[1]・・・経営図鑑(アルク)- 金澤一央
[2]・・・DX革命(プレジデント) – 大前研一編著