細谷功という名前を聞いてピンとくる方はいますでしょうか?

今日はその細谷功 氏が新しく本を出したというので、その刊行トークイベントに行ってきました。

「具体と抽象」という本で有名な同氏。

今回の話は、“ある”世界と“ない”世界のものの見え方の話。

”ない”ものに目を向けるのは難しいけど、そこに可能性はいっぱいあるよ。みたいな話などなど。

我々が見ている世界から、一歩離れて見てみたメタ思考に関するお話です。

今回は少しさわりの部分をご紹介したいと思います。

“ない”世界とは?

まず、最初に質問です。

家にあるものを15秒でできるだけ多くあげてください。
次に家にないものを15秒でできるだけ多くあげてください。

さて、どちらの方が簡単で、多く挙げることができましたか?

多くの方は、家にあるものの方が思い浮かびやすかったのではないでしょうか?

では、家にあるものと家にないもの、どちらの方が多くあるでしょうか?

当然ながら、家の中にあるものは限られていますが、家の外にあるものは、無限とも言えるほど多くのものがあります。

実は、我々の思考にも同じようなことが起こっているのです。つまり、我々は見えている範囲での物事はよく理解できるが、見えていない物事を見たり、気付いたりすることは、難しいけれど、ない世界は広く広がっているということが言えるのです。

未来のないものを考えるのは難しい

ビジネスの側面で、もう一つの例があります。これは書籍には載っていない内容です。

AIでなくなる仕事を15秒で考えてみてください。
次に、AIで生まれる仕事を15秒で考えてみてください。

どちらが多くリストアップされましたか?

おそらく、AIでなくなる仕事の方が多く思い浮かんだのではないでしょうか?

AIでなくなる仕事(つまり今ある仕事)は思い浮かびやすいが、
AIで生まれる仕事(つまり今はない仕事)は思い浮かびにくい。

でも、今後なくなる仕事と生まれる仕事はどちらが多いか?と考えると、今はない仕事が生まれる方がなんとなく多そうだというのはわかります。

きっと、未来を切り開いていく起業家は、この今はない仕事を作っていくことができる人物なんだろうなと思います。

新規事業なのに競合調査?

もう一つの面白い事例は、新規事業を立ち上げるという話。

これから新しいものを作っていくのであれば、当然ながらそれは今はないものを作っていかないといけません。

でも、実際には、新規事業を始めるとなると、まずは競合調査や市場分析から始めるということが起こり得ます。

まさにこれは、ある世界のものから作っていくというある世界の考え方です。もちろん、それが悪いと言っているのではなく、今はないものを作ろうと思うのならば、今あるものに目を向けていては、可能性は広がらないということになります。

ブルーオーシャンの見つけた方

事業戦略において、レッドオーシャンとブルーオーシャンという言葉があります。

ブルーオーシャンは、新しい市場を創造し、競争のない環境でビジネスを展開することを目指す戦略のこと。

既存市場の枠組みを超えて、まったく新しい需要を開拓することで、競争を無意味にします。ここでは、革新的なアイデアや新しい製品・サービスが求められます。

レッドオーシャンは、既存市場での競争が激しい環境を指します。ここでは多くの企業が同じ市場で競い合い、差別化が難しく、価格競争が激化することが一般的です。市場は飽和状態で、成長の余地が限られているため、企業は他社と直接対決しながらシェアを奪い合います。

レッドオーシャンはなぜ生まれるのか?それは、既存の企業と同じ変数で戦うから起こっていると著者は言います。

同じ変数とはすなわちすでに”ある”変数のこと。

ここでもし、今はない新しい変数を考えることができれば、それは既存のビジネスとの比較ではなく、全く新しい市場を作ったということになります。

ブルーオーシャンを見つけるためには、今はない変数が何かに目を向けると、あたらしい気づきが得られるのかもしれません。

ないの世界は広く、さらに広がっていく

我々は仕事を通して、多くの知識と経験を積み重ねていきます。

この行為は、ない世界をある世界に変えていくことにつながります。

では、知識と経験を積み重ねていけば、ない世界はなくなるのでしょうか?

当然ながら、ない世界は、いつまで経って存在しています。

ない世界を知ることが、世界を広げる

ソクラテスの哲学に「無知の知」というものがあります。

この言葉こそ、今回の内容で扱ってきた「ない世界」の事ではないかと感じます。

ない世界は、多くに人にとっては、存在すらし得ない世界で、そもそも知る事ができません。

でもない世界があるということを知る(メタ認知)することができれば、そこには大いなる創造性が残されていると思います。

これを読んだ方も、ぜひ「ない世界」に目を向けてみてください。